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執筆日時:2020年4月1日 18時00分
1.はじめに
4月3日(金)21時30分に米国雇用統計が発表されます。今回の数値は感染拡大している新型コロナウィルス(COVID-19)の影響がどの程度始まって「いた」のかが焦点になります。雇用統計の調査対象期間は毎月12日が含まれる週の調査という点で、直近の感染拡大の状況はまだ反映していないでしょう。そのため、市場エコノミストの予想範囲もかなり幅があります。(「4.今回の戦略」を参照)直近の米新規失業保険申請件数の弱い数値だけで予想しますと、大きなギャップを感じる可能性があります。4月1日以降の「ISM製造業景況指数」、「ADP雇用統計」の数値とは温度差が出るかもしれません。言語に反応するアルゴリズムやAIが変に反応しなければよいのですが・・・。


2.前回(3月6日発表)のおさらい
3月初旬は、中国から全世界的にコロナウィルス感染拡大となっている時期で、3月3日にはFRBが緊急利下げ(政策金利1.00%-1.25%、利下げ幅0.5%)したばかりで米経済への不安が台頭する中での発表でした。市場の事前予想では平均的な17.5万人増と見込んでいましたが、27.3万人増と前月に続いて上振れの結果となりました。失業率は3.5%と前月より0.1%改善(低下)。また、広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は前月から0.1ポイント上昇して7.0%となりました。一方で、平均時給(前月比/前年比)では、+0.3%/+3.0%と市場通りの良い数値。これらの数値を受けた市場は、むしろコロナウィルス拡大への懸念、FRBの緊急利下げ(3月3日)から影響を拭うことはできない状態で、まだ影響を受けていない数値であると、ばっさりと材料視しませんでした。ドル円とユーロドルは発表前の水準である105円台前半、1.13を挟んだ横ばい状態のままで、当然クロス円も小動きとなり、週の取引を終えました。
[前回発表前後の米ドル/円の動き]
出所:上田ハーロー, Bloomberg
3.今回(4月3日発表)の見どころ
《依然、過去の数値反応?》
前回の雇用統計レポートでも紹介していますが、米雇用統計の数値は、今週発表される「ISM製造業景況指数」、「ISM非製造業景況指数」のセンチメント指数や先週びっくりするほどの数値を示した「新規失業保険申請件数」の数値(先週発表:予想100万件、結果328.3万件/今週発表:予想350万件)とはかなり乖離した内容になる可能性があります。理由としては、米雇用統計は3月12日を含む1週間が調査対象であること。
一方、感染者拡大傾向が増してきたのが3月15日の週。米企業の対応(雇用止め、レイオフ、自宅待機など)が始まっているとは思いますが、どこまで反映しているのでしょうか。その意味では、今週の注目の米経済指標より、温度差が出てくるかもしれません。予想範囲での良い内容であれば、まだそれほど含まれていないといった反応になるかもしれません。以下は市場関係者の予想範囲ですが、来月の数値がどうなることか、ちょっと怖い気がします。
◆雇用統計の実績と予想 ※黒字は実績値および修正値、赤字は予想値(出所:Bloomberg、2020年4月1日時点)
2019年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
12月
非農業雇用者数変化・実績(万人) 30.4 2.0 19.6 26.3 7.5 22.4 16.4 13.0 13.6 12.8 26.6 14.5
非農業雇用者数変化・修正(万人) 31.1 3.3 18.9 22.4 7.2 19.3 15.9 16.8 18.0 15.6 25.6 14.7
失業率(%) 4.0 3.8 3.8 3.6 3.6 3.7 3.7 3.7 3.5 3.6 3.5 3.5
平均時給[前月比](%) 0.1 0.4 0.1 0.2 0.2 0.2 0.3 0.4 0.0 0.2 0.2 0.1
労働参加率(%) 63.2 63.2 63.0 62.8 62.8 62.9 63.0 63.2 63.2 63.3 63.2 63.2


2020年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
12月
非農業雇用者数変化・実績(万人) 22.5 27.3 -25.2 ※1
非農業雇用者数変化・修正(万人) 27.3
失業率(%) 3.6 3.5 3.9 ※2
平均時給[前月比](%) 0.2 0.3 0.2
労働参加率(%) 63.4 63.4 63.3

※1 非農業雇用者数変化の市場予想範囲 最低値 -40万人 ~ 平均値 -25.2万人 ~ 最高値 +10万人
※2 失業率の市場予想範囲       最低値 3.5% ~ 平均値 3.9% ~最高値 5.6%



◆関連の経済データ実績
2019年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ADP雇用統計・実績(万人) 21.3 18.3 12.9 27.5 2.7 10.2 15.6 19.5 13.5 12.5 6.7 20.2
ADP雇用統計・修正(万人) 30.0 19.7 15.1 27.1 4.1 11.2 14.2 15.7 9.3 12.1 12.4 19.9


2020年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ADP雇用統計・実績(万人) 29.1 18.3
ADP雇用統計・修正(万人) 20.9 -
非農業部門雇用者数と失業率推移(3月予想値平均を含む)
また、調査対象期間後に FRBが3月16日(現地時間では3月15日の日曜日!)に緊急利下げ(政策金利0.00%-0.25%、利下げ幅1.0%)を行いました。3月17-18日予定のFOMCは当然開催中止となり、その後、各国の中央銀行も追随して緊急利下げ状態になったことは、皆様もご存じかと思います。そのため、ほぼすべての主要政策金利がゼロ金利状態になっており、市場のわずかな金利の動きに一喜一憂している地合いになっています。


《新型コロナウィルス感染拡大は欧米から新興国に広がることで》
前回の米雇用統計は、建設業・サービス業種の雇用者増加がかなり目立ちましたが、これらの数値が大幅にダウンしていることは予想できるでしょう。調査期間の週では米国内感染者数はまだ3000人未満でした(3月1日は91名でした!)が、FRBが2度目の利下げを決めた週には約2万人に急拡大し、3月31日現在では約18.9万人です。米大統領は、米国内の死亡者数予想を発表しました。


今後、懸念されるのが新興国です。ブラジル、トルコ、そしてアフリカ諸国など医療体制が脆弱な地域にも広がってくる可能性があります。そうなりますと、最近でこそFRBを中心に各国中央銀行のドル資金供給が行われて落ち着いていますが、新興国関連でのポジション解消圧力+ドル資金需要が発生する可能性があります。


ドル円目線で考えれば、ドル買い(資金需要)、円買い(リスクオフ)の綱引き乱高下が発生する可能性があります。こうなりますと、米雇用統計の数値よりは資金繰りが重要課題として再燃しますので、クロス円の動きには注意したほうが良いと思います。
4.今回(4月3日発表)の戦略



【要点】リスクオフ目線ながらも、ドル買いに注意
非農業部門雇用者数とADP雇用者数推移(3月予想値平均を含む)
4月3日(金)発表の米雇用統計の予想「平均」は・・・正直、予想範囲が広すぎるため平均値はあてにしない方がいいかもしれません。平均値は、失業率3.9%・非農業部門雇用者数-25.2万人増です。予想範囲は、失業率3.5%~5.6%。非農業部門雇用者数は40万人減~10万人増(4月1日、Bloomberg調査による)と大きな幅があり、市場では当然悪化予想の意識が強いです。また、先行する経済指標として、「3月ADP雇用統計」(4月1日発表)の予想は15万人減、「ISM製造業景況指数」(同じく4月1日発表)予想は44.8と大幅低下です。
前述したように今回の数値は、コロナウィルス感染拡大が急拡大する直前の時期。その後のFRBの対応を考えますと、市場予想「平均」よりプラスの数値であれば、かなり懐疑的な目線になりそうですし、予想範囲下限内でも、確認できたというぐらいの反応でしょうか。気になるのは、ドル資金需要の動き。いつ、どれくらい出るのかは、資金繰りが必要な担当者次第。テクニカル分析でもわかりません。ユーロや、ポンドなどの対ドルの動き、そして新興国通貨の動きに注意していきましょう。リスクオフ目線の「ドル買い・円買い」とドル資金需要の「EM(新興国)売り・ドル買い、ユーロ売り・ドル買い」の攻防になりそうです。



テクニカル的には、ドル円は1ドル=112.212円(2月20日高値)からの下落を101.156円(3月9日安値)まで見たのち、111.702円(3月24日高値)まで反発しました。前半はリスクオフ、後半はドル資金の買い。その後、3月9日安値から見た上昇の38.2%・21日移動平均線付近でのもみあいです。200日移動平均線以下になっている状態で、気になるのは、雲抵抗帯の薄さと遅行線の位置。雇用統計発表の日(4月3日)に遅行線が日足データに対してどの位置にあるのか。遅行線が106円台半ばより下回っているような場合には、雲抵抗帯を回避する可能性がありますので、下値リスク注意で、105.50円を目指すリスクありでしょうか。一方、重なる場合には107-110円の間での乱高下予想。ある意味、当日よりは、前哨戦の米経済指標次第で、位置・スタンスが決まるかもしれません。
◆雇用統計の結果
<表の見方>
結果:非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったときは 〇、下回った時は ✖
当日:日足でみて、上昇か下落



【今後の米国雇用統計発表予定】
  
・2020年04月03日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年05月08日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年06月05日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年07月02日(木)21時30分発表(サマータイム)
・2020年08月07日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年09月04日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年10月02日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2020年11月06日(金)22時30分発表(標準時間)
・2020年12月04日(金)22時30分発表(標準時間)

日時は日本時間です。経済指標発表日時は予告なく変更される場合があります。



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