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執筆日時:2019年6月6日 12時00分
米国雇用統計の予想と戦略


6月7日(金)21時30分は米雇用統計。米中通商問題激化での悪影響が徐々に米経済指標に現れ始めている様子で、雇用統計への影響も気がかりとなってきています。またドル円相場が下落を続けていることや貿易問題の影響度を測るという意味で、ここ数回の雇用統計の中では注目度が高まっている印象を受けます。今回の雇用統計がさらなるドル売りのきっかけとなるかどうか、要注目です。




前回(5月3日発表)のおさらい


非農業部門雇用者数は市場予想(18.5万人)を大幅に上回る26.3万人となり、失業率は3.6%と約半世紀ぶりの低水準となったことで発表直後はドル買いが強まりました。しかし平均時給(前月比・前年比)は予想を下回る結果となり、先行きのインフレ期待は盛り上がらず、ドル買いに傾くことはありませんでした。ドル円は発表直後に111.70円付近まで上昇しましたが、上値が伸ばせず反落するとその後は上値の重さが意識され、発表前の水準(111.50円)を割り込み、その後のNY時間も下落が続きました。
[前回発表前後の米ドル/円の動き]
出所:上田ハーロー, Bloomberg
今回(6月7日発表)の見どころ


■予想並みの結果が出れば一先ず安心感も?
長期化している米中通商問題の影響からか、直近の製造業PMIやISM製造業指数、耐久財受注など米製造業を中心とした経済指標に弱さが目立つようになってきました。特に耐久財受注の減少は企業が設備投資に消極的であることが示唆され、通商問題の行末に不透明感が強い中で、企業心理も弱気になってきている可能性も考えられます。また前回までの雇用統計で、製造業での雇用者数が平均して7千人程度の伸びに留まっており、昨年の第1四半期(平均2万人程度の増加)と比べると冴えない状況であることが伺えます。その他、小売業についても雇用者数が3ヶ月連続で減少を記録している点は気になるところです。貿易問題を背景に今後幅広い業種で企業活動が低下していくこととなれば、今後のデータは更に悪化していくことになりそうです。


ただ、米中通商問題が一層激化したのは、先月10日の対中関税率の引き上げや、同15日のファーウェイ製品への規制強化のタイミングとなります。雇用統計は毎月12日を含む週での状況を調査するため、今回の雇用統計のデータは制裁発令直後に集計されたこととなり、影響が十分に反映されていないと考えられます。そのため、今回の雇用統計ではそれほど悪い数字とはならないかもしれません。


今回の非農業部門雇用者数の市場予想は18万人程度増加となっていますが、これを前月の雇用者数(1.51億人)からの増加率に引き直すと約0.12%の増加となります。これは今年2月の結果(増加率+0.03%)を除いた、直近半年程度の中で最低水準となっており、この程度であれば予想通りの結果に期待できると考えられます。しかし足許の状況を考えると、やはり大幅増には期待はしにくいものと考えます。


また注目度の高い平均時給についてですが、前述の通り企業活動に低下の兆しが見える中、採用を絞ることはもちろん、企業のコストとなる人件費の伸びが抑えられる可能性も考えられます。そのため、時給の上昇は引き続き緩やかなものに留まるものと考えられ、こちらも大幅上昇にはならないのではないかと予想します。


通商問題が意識される中であるため、いずれの項目も予想比大幅減の結果にならなければ、一先ず安心できる結果と言えるのではないでしょうか。ただ、パウエルFRB議長から経済成長を持続させるため、利下げも検討する姿勢を示されたことは気にかけておきたいところです。雇用者数が先のADP雇用統計のような減速となると、FRBの政策目標の一つである雇用の最大化の面で不安感を抱かせることとなり、市場で早期利下げが強く意識されることとなりそうです。
◆雇用統計の実績と予想
年月 2018
10 11 12
実績
非農業雇用者数変化(万人) 20.0 31.3 10.3 16.4 22.3 21.3 15.7 20.1 13.4 25.0 15.5 31.2
失業率(%) 4.1 4.1 4.1 3.9 3.8 4.0 3.9 3.9 3.7 3.7 3.7 3.9
平均時給[前月比](%) 0.3 0.1 0.3 0.1 0.3 0.2 0.3 0.4 0.3 0.2 0.2 0.4
労働参加率(%) 62.7 63.0 62.9 62.8 62.7 62.9 62.9 62.7 62.7 62.9 62.9 63.1

年月 2019
10 11 12

実績 予想
非農業雇用者数変化(万人) 30.4 2 19.6 26.3 18.0        
失業率(%) 4.0 3.8 3.8 3.6 3.6            
平均時給[前月比](%) 0.1 0.4 0.1 0.2 0.3
労働参加率(%) 63.2 63.2 63.0 62.8 -
今回(6月7日発表)の戦略



【要点】足許の地合い悪く、基本スタンスは売り目線!
◆雇用統計の結果
※表の見方
結果:非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったときは 〇、下回った時は ✖
当日:日足でみて、上昇か下落

前回の雇用統計は、雇用者数の大幅な上振れや失業率が歴史的な水準へ改善しましたが、平均時給が伸び悩んだこともありドル買いは盛り上がらず、111.60円付近で頭を抑えられ、上値の重さが確認されました。その後NY時間にかけて下落が続き、その週のNYクローズでは111円台を保ったものの、週末にトランプ大統領が中国に対する関税の引き上げに言及したことで、翌週は大きく下窓を開けることとなりました。その後の反発局面でも111円台回復には至らず、米国のファーウェイ製品への規制強化や中国がレアアース輸出制限措置の検討など、米中間の対立の激化によるリスク回避姿勢の高まりから円高が進行しています。また5日に発表となったADP雇用統計は、市場予想を大幅に下回る結果(2.7万人増)となり米経済への不安感が高まり、米長期金利は一時2.06%と2017年1月以来の低水準まで落ち込みました。それによりドル円は一時107.80円台まで下押ししました。現時点では108円台での推移となり、107円台後半で下げ止まっている様子ですが、戻りは鈍く下値拡大にリスクのある状況が続いています。足許の材料に不安要素が多い中、市場では米景気減速が意識されFRBが年内に複数回の利下げを行うとの見方も出てきています。今回の雇用統計において、米経済に弱さが見られることとなれば利下げへの思惑は膨らみそうで、米長期金利の低下やドル安が更に進行することとなると考えられます。


雇用統計に弱さが見られる場合、今現在下げ渋っている水準である年初の暴落後の安値 107.77円付近を下抜けるかに注目です。その水準以下では年初の暴落を除き、2017年9月安値107.30円まで目立った下値目処がなく、下げ足が早まることが懸念されます。また、107円台は月足一目均衡表・雲下限をしっかりと下回る水準となり、長期的にも下落傾向が強いことが示唆されるため、値ごろ感で買う場合は短期的なサヤ取りに留めたほうが無難でしょう。一方で好結果となる場合ですが、足許の地合いの悪さを考えると上値は限定的であると考えられ、慎重に戻り売りの水準を探るのが良さそうです。




【今後の米国雇用統計発表予定】
  
・2019年  6月7日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年  7月5日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年  8月2日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年  9月6日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年10月4日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年11月1日(金)21時30分発表(サマータイム)
・2019年12月6日(金)22時30分発表(標準時間)

日時は日本時間です。経済指標発表日時は予告なく変更される場合があります。





【バックナンバー】

【2019年  5月3日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2019年  4月5日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2019年  3月8日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2019年  2月1日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2019年  1月4日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年12月7日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年11月2日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年10月5日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  9月7日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  8月3日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  7月6日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  6月1日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  5月4日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  4月6日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  3月9日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  2月2日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2018年  1月5日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2017年12月8日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略

【2017年11月3日(金)発表】米国雇用統計の予想と戦略



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